香月 夕花

小説家。書籍の刊行情報など

HSP(Highly Sensitive Person)である主人公・真尋について—見えない星に耳を澄ませて—

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「見えない星に耳を澄ませて」は音楽療法をテーマとした作品ですが、もう一つのモチーフ「HSP(Highly Sensitive Person)」について、本稿でご紹介したいと思います(Instagramより転載)。
 
私がHSPの概念を知ったのは確か00年代の中頃。「ささいなことにもすぐに動揺してしまうあなたへ」という本が切っ掛けでした。
 
自分がそうだと言うつもりはないのですが(もっとお困りの方は多いと思うので)他人の感情や思惑を感じ取ってそれに振り回されがちだった自分にはとても興味深い内容でした。感受性は人それぞれで当たり前、繊細さを恥じる必要はないのだ、という提言に勇気づけられた人は多かったと思います。繊細な感覚そのものに加えて、それを自分で責めてしまうこともしんどいんですよね。
 
音楽療法士を目指す真尋にはHSPの傾向があります。他人の気持ちに振り回される自分を、他人の気持ちに寄り添える自分に変えていこうとする。ネガティブに評価していた自分の資質を、何とか活かしていきたいと奮闘する。そんな彼女の心の旅が描けていれば嬉しいです。
 
ささいなことにもあれこれ感じて挙げ句心の傷になる、というのはやりきれない。その一方で、風景や音楽と言った何でもないものに感じ入って元気になれる、というある意味お得な面もあるわけです。
端から見て退屈そうに見える生活でも、本人はちっとも退屈していなかったり。地味にドラマチックと言えるかもしれません。(2021.1.27)